高3探究授業(1学期・国語科)リポート

2024.07.31

  • 2019年度入学
  • 国語科

今年度からスタートした高校3年生を対象にした「探究」の授業。国語科では「日本文学食べ歩き」と題した講座を用意しました。この講座は、国語科の教員がそれぞれの専門性や興味・関心を生かして、2回程度の授業を担当するリレー方式の講座です。1学期は、4人の先生方が授業を担当しました。学期の終わりに際し、その内容をここにご報告いたします。

第1回担当・本間純一先生

授業のキーワード・「俳句」

【授業の概要】

「俳句ワークショップ〜俳句との「出会い」」と題し、3週に渡りワークショップを実施した。受講者の皆さんに「俳句」という新しい表現方法を獲得してほしいと考え、さまざまな俳句との「出会い」を用意した。1週目は、俳句を「詠む(作る)」との出会い、2週目は、俳句を「読む(鑑賞する)」との出会い、3週目は、「句会」というイベントとの出会い、をそれぞれ設定した。

【生徒の感想】

・(作ってみて)難しいの一言に尽きる。共感性が高く、それでいて斬新というのはかなり酷であった。句を作る際は自身のボキャブラリーの少なさに悩まされ、プロの凄さを実感させられるばかりであった。

・(句会に参加して)みんなそれぞれ句の着眼点や感動ポイントが違っていて、そうした「違い」を知るのも面白かった。何より他人の作った句を皆でああだこうだと考えたり言い合ったりしたのが楽しかった。

第2回担当・橋詰和直先生

授業のキーワード・「源氏物語」夕顔

【授業の概要】

1限目は、平仮名の出来方や変体仮名の存在を説明した後、崩し字で書かれた『源氏物語』夕顔巻の和歌・それが翻刻されたもの・かな字典のコピーを配布し、書かれた崩し字の字母がそれぞれどの漢字なのかを推測してもらった。2限目は、1限目で紹介した夕顔巻の和歌の読解を行った。主張の異なるいくつかの論文を紹介し、自分なりの解釈を書いてもらった。

【生徒の感想】

・普段の古文の授業ではほぼ一つの解釈に従って習っていたので、今回のように様々な解釈の可能性に触れることができて、楽しかったです!!

第3回担当・奥村潤先生

授業のキーワード・「助動詞」 

【授業の概要】
「文法を探求(探究)してみる」というテーマで、古文に用いられる助動詞を眺めてみました。
助動詞一覧表(活用表)は情報量が多く、いかにも複雑。生徒には概して不人気ですが、改めて向き合ってみるといろいろな気づきがありそうです。
・1週目は活用の型に注目して成り立ちを想像したり、活用形不備(活用表で○になっている部分)の理由を考えたりしました。
また、実際の古文を使って「助動詞並べ替え作文」に挑戦。そこから助動詞の承接順序(複数連なる場合の並び順)の傾向を見つけ、「表現者の主観的な判断を文末近くに示す」という日本語の特徴とあわせて考えました。
・2週目は伝聞・推定の助動詞「なり」を取り出して、奈良時代・平安時代の用例を比較し、語源とされる「音あり」の意味を色濃く残す用法から、語源的意味が薄まった「伝聞」、「推定」へという語義の拡大を観察しました。そして、個々の助動詞がもつ複数の「文法的意味」が、実は互いに連続しているということを考えてみました。
「おはなしが読める」と期待していた生徒諸君、ごめんね。おつきあいありがとうございました!

【生徒の感想】

・助動詞の表は古文を読む時の参考ぐらいにしか考えていなかったが、じっくり見てみることで、助動詞の特徴や成り立ちなどを深く捉えることができたと思う。
ただ覚えるだけでは理解できないことが他にもたくさんあるのかなと思った。
・たった200年で言語がこんなに変化することに驚いた。どうして奈良~平安の時期に助動詞が発達したのか、どうしてそれらが江戸まで残っていたのかにも興味がわいた。

第4回担当・上野愛理先生

授業のキーワード・「虫めづる姫君」

【授業の概要】

日本文学史の最古の短編集である『堤中納言物語』の中の一編、「虫めづる姫君」を読み、そこに描かれた風変わりな姫君の人物像を読み解きました。

現代社会におけるジェンダーやアイデンティティの問題と通底するものがあり、そのような人物造形がどこから来たものなのか、時代背景や当時の思想について合わせて考察を試みました。

 【生徒の感想】

・「今まで古典を読む時は、正しい現代語訳があって正しい解釈があるものが多かったので、内容だけでなく作者まで様々な考え方ができるものに触れることができて面白かった。源氏物語がいかにリスペクトされているかも、今まで以上に感じることができた」